引っ越し大名!
品質のこのみ★★★★★
内容のこのみ★★★★★+★★★★★
姫路から大分への国替えを命じられた潘氏達の物語
油断してしまった。タイトルに「!」のついて主人公が星野源さんで歌って踊るという前振りにすっかり油断させられた。下手をすると命を落とすところだった。あぶなかった。
戦国時代を二度と招かないよう、江戸という未熟な統治ではあるものの全体を幸福のための舵取りをしている幕府。富の再分配の過程では平時の苦難に対面することはありうる。メインの引っ越しでは暗躍する者の影もあるものの、それが取り除かれてもまだ続引っ越し。これはもう全体の調整をしている当時としては自然な煽りであることは想像できる。誰かが悪いのではなく、ダイナミックな富の再分配を試行錯誤している。
大団円&クライマックスは完全にフェイク。これはドラゴンクエスト11のプロットをなぞる構成。
ドラクエ11ではエンディングの後に過ぎ去りし時を求めてのストーリーがはじまる。そして失ったものを取り返す世界線変動がおきる。そして最後にもう一段階歴史の中で救われなかった人を救う話がある。あるけど、そこは想像にまかせますという展開になり、プレイヤーの関わる物語はそこで終わる。引っ越し大名!ではそれをすべて回収し、しかも別の世界線というか道を選ぶ人々も神々しい景色をバックに賛美してみせる。そうなんだ、農家の人々は藩や国がかわろうと人々を支える。歴史物の映画ではある種、城内という閉じた権力階級の外を不幸というレッテルを貼って描く場合がある。でも、それはおごりである。生かされているのだということを強く描く結末になっていた。それまで事あるごとに多くを語らない殿が、最後にとる態度はとてもエモく、引っ越しのドタバタ映画をみはじめたはずなのに、社会の構造において弱きものが決して弱きものでなく強きものが消して強きものとはいえない。苦難を乗り越えよう!これからの世界には苦難が待っている。強い信念で挑んでも世界観を変えざるをえないことがある。そして、のちの世界から振り返るとその分岐した世界が本流となることもある。むしろ権力者の数は少ないわけで、その場その場で与えられたことを懸命にすることも素敵なことなのだという激励にも思えた。
ゲイな殿のおちゃらけキャラ(松平直矩のWikipediaを見るとそっちの趣味があったっぽい)が、最後にはナウシカのように、この汚れた手に感謝するというキャラクターの反転もみごと。主人公の片桐も最初とクライマックスと、さらなるラストではまったく別人に見える。成長物語というと軽すぎる。彼がガリレオのようにアイディアを閃くのにも映画の中であるちゃんとした仕掛けが用意されている。ちなみにその仕込みの時の片桐のオバケのようなメイクは笑ったけど、笑わされただけでなかったと思った瞬間と あぁ 感はひとしお。
日本の時代劇映画の好きランキングが大変動した。
周到に練られたプロット、そして重要なのはそのプロットごとの時間配分。それらを無理なく心地よくつなぐミュージカルパート。ちょっとこわいけど時代劇ならではのチャンバラシーンはあっけらかんとヒロイックに展開。物語の大きな節目をつけるためのちょうどいい塩梅で配置される。
2020年01月14日
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