上着のポケットに手を突っ込みながら歩く。
さぁ、今日も一丁稼いでやりますか。
そう思って賭場のドアに手をかける。
「あら、悟浄じゃない」
「お、リンメイじゃん。これから?」
馴染みの女に声をかけられた。
「そういうアナタは何してんの?」
「何…ってリンメイに会いに決まってるじゃ〜ん」
「アンタねぇ…」
俺の軽口に、いつものように応えずになぜか怒ったような顔をしている。
「今夜は帰んなさい」
「なんで」
「今日はアナタの誕生日でしょ。同居人さんがディナーの用意してくれてたんじゃないの?」
リンメイの言葉に思わず眉を顰める。
今日が自分の誕生日だということを−実は気付いていた。が、例年のように酒場にいる女たちと呑んで騒いで、朝方に家に帰るつもりだったのだ。
「用意なんてしてねーよ?だってアイツ、俺のたんじょーび知らないし」
「知ってるわ。だってあたしが教えたもん」
「…え?」
「だから。早く帰ってあげなさい」
『にっこり』と音が付きそうな笑顔で言われて、俺は賭場のドアから手を放した。


「誕生日、ねぇ…」
別に、なんの感慨も湧かないけれど。
せいぜい酒場で気兼ねなく騒げる日ってくらいなもんだ。
…あんな気ィ遣って帰されちまったけど、アイツ別に何にもしてないと思うんだよなぁ。
そもそも、男が男の誕生日なんて祝うか?
こんな早く帰ってきて、
「どうしたんですか?今日はツいてなかったんですか?」
なーんて言われたりして。……ありえる。
なんか、人が言うこと先回りして考えるって俺、どーよ?
自分の家の前に来たのに、ちょっとドア開け辛い。壁に寄りかかって煙草に火をつける。
一口、吸い込んだところで
「あっれー。悟浄なにやってんの?」
ドアが開けられた。
「っつーかサル、なんでお前がウチにいるんだ?」
「サルっていうな!」
「二人ともそんな所にいないで入ってください。食事冷めちゃいますよ」
中から八戒の声がする。
「あっ、そーだ!ごじょー早く早く!」
悟空に後ろからグイグイ押される。
「とっとと座れ」
食卓には不機嫌そうな最高僧。
「えっと三蔵サマ?なんでウチにいんの?」
さっきと同じ疑問が出る。
「悟浄。席についてください」
食卓の上には様々な料理。…ってコレ、『ご馳走』ってカンジ?
悟空が各自の席にグラスを並べてる。
八戒が持っているのは大きなホールのケーキ。その上には『1』と『9』の形をしたロウソク。
「八戒それは…」
「さすがに19本もロウソク立てられませんから。悟浄はそっちのほうが良かったですか?」
「いや…」
「それに、ケーキっていうとあのバタークリームのバラが乗ってるのがいいかなーと思ったんですが、あれキライな人もいるんですよね。だからシンプルな苺のショートケーキです」
「美味いじゃねぇか、バタークリーム」
「ほらっ悟浄はやくっ」
悟空に引っ張られて椅子に座らせられる。
テーブルの真ん中に八戒がケーキを置く。
三蔵がライターを準備してる。

−まったくコイツ等は。
 ま、こんな日も悪くないよな。



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ブログに載せていた悟浄誕です。
いや、「苺のショートケーキ(1ホール)の前で照れ笑い」なごじょさんがぱっと浮かんだものですから。
時期は『埋葬編』の直後かなと。
(自分の中では『BE THERE』は八戒さん誕生日前後なんですよ)
ぎこちなさも残しつつ、少しずつ家族や仲間になってきた彼ら、という感じがでていればいいのですが。

三蔵さまが悟浄に優しいですが、多分このあとしっかり悟浄をからかったかと。
「バタークリーム」三蔵さまなら美味いって言いそうです。

このような話を読んでくださりありがとうございました。

'09.11.09
'09.12.13再掲

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