さわ、さわ、さわ、と田の上を風が渡っていく。
それに揺れる穂を八戒は眺めていた。

−綺麗ですねぇ…。

田の中を横切る道にジープを停め、昼食を取った。
今は腹ごなしに悟空はあちこちを駆け回っている。
稲穂の揺れる中に、茶色の頭がひょこひょこと見え隠れする。
「あの猿は何やってんだかねぇ」
呆れたように悟浄が言った。
「バッタでも追いかけてるんじゃないですか?」
「子供だね、まだまだ」
ぷかり、と口から煙草の煙をはき出す。
こんな空気が良いところで、煙草も美味いのかもしれない。
すぅ、と煙が散っていくのを目で追っていくと、ジープが気持ちよさそうに空を滑っていくのが見えた。
高い秋空に、ジープの白い羽がよく映える。

−綺麗ですねぇ。…綺麗と言えば。

目を天から地に戻す。
眼前に広がるのは、黄金に色づいた稲穂。果てしなく続いていく、風に揺れる金。
前後も、左右も、自分はその色に囲まれている。
どこまでも、どこまでも続く、その光に。

ぐいと後ろから腕を引かれた。
「うゎっ…、もう、どうしたんですか?三蔵」
強く引っ張られたために、レジャーシートの上に転がりそうになる。
少しだけ睨んでやったのに、更に引っ張られ、ついに三蔵の膝に頭を横たえる形になってしまった。
「うっわ〜三蔵サマ、ダイタン〜」
悟浄のからかいの言葉に、三蔵は
「うるせぇ…」
と呟いて、がちりと拳銃を構える。
「はいはい、邪魔者はしばらく消えますよ」
ごゆっくり〜、と手を降って悟浄が腰をあげた。

さらりと三蔵の手が額に触れ、それからゆっくり目を覆われる。
「三蔵?」
「これからまた運転だ。少し目を休めておけ」
ここから次の街まで、順調にいっても5時間ほどかかる。
助手席の三蔵や、後部座席の悟空、悟浄はいつでも寝ることはできるが自分はそうはいかない。
目を、と言いながら実は『少し寝ろ』という三蔵の心遣いに笑みがもれた。
「稲穂の色を見てたんですけどねぇ…貴方の髪のようで」
「言ってろ」
「でも、全然違いますね。貴方の方がもっと力強い」
「馬鹿なこと言ってると押し倒すぞ」
「嫌ですよ」
貴方は確かに黄金の輝きの人だけど。
優しく包み込む光も持っているから。
その温かい掌の下、そっと瞼をとじた。



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思い切り季節はずれです。
もう12月になりますよ?
こういう『季節はずれ』なものは下書きに山ほどあるのですが、来年の秋まで待てないのでアップしました。
しかし、38というにはあまりにヌルすぎです。

'09.11.25

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