睡蓮のあいだに柔らかい光があふれる。
神々の住まう庭に下界を見下ろす水鏡がある。






俺が呼んだら、八戒は笑って「はい」ってこたえてくれた。
悟浄は三蔵とむずかしい話をしていたけど、「メシ食いにいくか!」って笑った。
三蔵は…ちょっと面倒くさそうにしてたけど…でも、俺たちといっしょに外に出た。
寺の坊さんたちが三蔵を引き留めたけど、無視して歩き出す。
外はあったかいひかり。
「ああ、良い天気ですねぇ」
八戒が目を細めて空を見上げた。
悟浄が俺の頭をぐしゃぐしゃにしながら応える。
「絶好の遠足日和ってな?」
「いいですね。今度みんなでお弁当もって」
「はーい、バナナはおやつにはいりますか?」
悟浄の大きくってあったかい手と、八戒のキレーな笑顔と。
「やめろ。お前らと旅なんて死んでもごめんだ」
三蔵の仏頂面と。
俺はすごくすごく楽しくなった。
でも、それ以上に。

やっと、帰ってきた。

なんでか知らないけど。でも知ってる。
三蔵がいて。そんで悟浄と八戒がやってきて。
『ここ』がやっと俺の場所。
ずっと帰りたかった俺の場所。

もうどこにも行かないよ。
みんなと一緒だからな。






天界の蓮の上、二人の神が彼らを見下ろす。
「無事、四人巡り逢ったようですな」
「ふん」
「観世音菩薩」
「なーんだ」
二郎神の問い掛けに面倒くさそうに菩薩が答える。
「もし玄奘三蔵が猪悟能を厳罰に処したらどうするおつもりだったので?」
「別に」
「別に…って」
「彼奴らは自分たちで歩む道を決める。五百年前もそうだったろう?」

−星が行き先を決めるなら砕いてしまえ。
風が運命を定めるなら自らそれを起こせ。
 自分の自由のために。

「さあ、見せてもらおうじゃないか。お前たちの行く先を」

天界の蓮の上、二人の神が彼らを見守っている。







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アトガキ。

サイト開設の一本目。それなのにちょっと読みづらくてすみません。
前半が悟空一人称で後半が三人称なのは、もともと別のお話だったからです。
まとめた時点で一人称か三人称のどちらかに合わせなくてはいけないのですが、どうもしっくりこなくてそのままにしてしまいました。

物語の始まりは、三蔵が悟空を五行山から連れ出したところからなのでしょうけれど、本当に『始まった』と言えるのは悟浄、八戒が加わってからだと思うのです。
と言うか、あの悟浄に頭を撫でられて笑ってる悟空が好きなんですが。


'09.11.23



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